プロジェクト事例

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事例2:Link〜森と水と人をつなぐ会〜 まっぷらん
Linkの設立目的と主な活動内容
Link~森と水と人をつなぐ会~は、今年(2004年)1月に設立された新しい団体です。設 立の目的は、「タイのチェンマイを拠点にアジア各地の人々と連帯を築き、それぞれの地域にくらす人々が民族や宗教を越えて互いを尊重し協力し合いながら、自然との共生を通して持続的な社会の実現を図ること」です。主な活動内容は、 ・ヴィアンパー計画:北タイ農村の環境保全を中心とした住民主体の村落開発支援、 ・エコライフ・イン・チェンマイ:北タイ最大の都市チェンマイの環境保全活動、 ・交流事業:開発や環境問題について、視察、スタディーツアーなどを通して村人や参加者(支援者)などと共に学ぶこと、です。 詳細な活動内容に関しては、今後、このニュースレター“まっぷらん”を通して少しずつ書いていきたいと思いますが、この創刊号と第2号ではLinkの主たる活動のひとつである「ヴィアンパー計画」を紹介します。
ヴィアンパー計画について
【活動の背景】
私たちの活動する北タイ地方は、その大半が山岳地帯です。ここにはタイ族に加え、たくさんの少数民族が住み、多様な文化を築き上げてきました。この地域はまた、チャオプラヤー川やメコン川、タンルウィン(サルウィン)川などに注ぐたくさんの河川の水源地でもあり、豊かな森に恵まれた豊穣の地でもあります。
 しかし近年、大規模農園開発などによって木が切られ、土砂などの地下資源の採掘が進むことによって、森が次々と姿を消しています。また現金収入の必要から、換金作物を商人の言う通りに導入した結果、多くの農民が農薬や化学肥料の購入による借金にあえいでいます。借金だらけの農民から土地を安く買いあさり、大規模農園を展開するバンコクなどの大企業もあります。村人自身も畑や田に農薬をまきますが、こうした企業の散布する農薬の量はケタが違います。換金作物栽培の拡大は水や空気、土をも汚染し、住民が公害に苦しむなど、地域のくらしが根底から揺らいでいます。子どもたちの教育の機会や医療も不十分なままです。これらに加え、特に少数民族の人々はひどい差別に苦しんできました。
こうした状況の下で、しばしば麻薬の密売や森林の違法伐採、人身売買などが人々、特に弱い立場にある少数民族や子どもたち、女性、老人などのくらしをおびやかしています。
 Linkはこれらの開発によって困難に直面する人々が、生活の基盤である森や水を守り、くらしの自立を図ろうとする活動を、主に交流を通じて支援するNGOです。

【活動地の概要】
「ヴィアンパー計画」の目的は既に書いたように、貧しい農村の自立支援ですが、その端緒としてチェンマイ市から北へ約130km、チャイプラカン郡の山中にある、ホアファイという村で活動を始めています。1つの村に4つの集落、5つの宗教が同居し、タイでも屈指の森が残るこの村も、近年の森林の乱伐によって乾季には川や井戸の水が利用できないほど減り、また、雨季には洪水に見舞われるようになりました。子供たちの教育費などの出費がかさむ一方で、政府からは土地や森の利用を制限され、農産物価格は低落の一途をたどり、日雇いなどの農外就業の機会も限られる中、麻薬密売などの問題も深刻化しまオた。
数年前より村人の間で、このまま環境破壊がすすめば、村での生活が危うくなると意識されるようになりました。森林保全の活動が始まり、状況を好転させつつありますが、互いの利害がぶつかりあい、広く皆が協力し合うというところまでには至っていません。また、農薬や化学肥料を使わない有機農業を普及しようという動きもありますが、これも一部に限られています。
こうした中で、パカニョーという民族が中心のホイポン集落から、女性たちによる収入向上のための活動を行ないたいという希望がでてきました。

【村人とLinkの活動】
Linkのスタッフがこの村と出会って約2年が経ちます。これまでも、森を守る活動に必要な地図(立体模型)の作成などを支援しながら、一貫して村の開発や自立といった問題について、村人と共に考えてきました。
「少しでもくらしをよくしたい」。子供たちの学費、医療費、生活費・・・・・・。ホイポン集落の村人が始めたのは、伝統的な機織り技術を活かした収入向上への道の模索です。
ホイポン集落の女性はみな、家族の着る民族衣装を自分で織ります。しかし製品化や販売の経験はありません。製品は村の環境保全や健康を考えて、化学染料を使わないものを作りたいというのが村人の考えですが、かつての草木染めの技術はほとんど失われています。
Linkは、村人のグループが役所などから支援を受けるために必要な手続きの方法や、そういった担当部署や関連機関との連絡の取り方、各種技術研修や販路に関する情報収集の方法などをアドバイスしたり、すでに機織りの住民グループがあり、活動が収入向上に結びついている村との交流を通して学ぶ機会を提供する、といった支援を行なっています。
いずれの支援もモノや情報を直接提供するのでなく、住民自身の知識や経験、資金、時間、ネットワークを活用して進めます。これはLinkの活動終了後、新しい問題が起き、村人だけでそれらに取り組まなくてはならないという時に、今回の経験が活かせるようにするためです。また、ホイポン集落と同じように「資金もツテもない他の村人が参考にできるような村つくり」ということも念頭におかれているためです。

【参考文献】Link まっぷらん 創刊号<改訂版>